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2019年1月7日月曜日

The Plow Boy(ミッキーの畑仕事)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1929年6月28日
評価:★5

ホーレス・ホースカラーのデビュー作


「ミッキーマウス」第8作。
本作前後から、バート・ジレットやベン・シャープスティーン、レス・クラーク、そしてウィルフレッド・ジャクソンといったアブ以外のアニメーターたちが作画に大きく関わるようになる。彼らは1930年にアブがディズニーから独立した後、スタジオの作風をより洗練されたものへと変化させていく。

農夫に扮するミッキーは、乳絞り女のミニーと出会う。ミッキーは自分の仕事はそっちのけで乳絞りを手伝うが、調子に乗ってむりやりミニーとキスしてしまったのでミニーはカンカンに怒り出す。それを見てホーレスは大笑いするが、ちょうどその時飛んできた蜂に刺されてしまったのだからさあ大変。ホーレスは痛さのあまり大暴れ、さらには切り株にぶつかった衝撃で鋤が壊れてしまった。嘆き悲しむミッキーだったが、なんとそこにはのんきに土を掘っている豚がいるではないか。大喜びするミッキーとホーレスは豚を鋤に見立てて、再び畑を耕し始めるのだった。

(図1)
この時期のミッキー作品に共通する欠点だが、本作には一貫したストーリーラインが存在しない。後半のホーレスが暴走するシーンにて次々と登場する視覚ギャグは楽しいが、基本的にはテンポも悪く音楽も貧弱で退屈な内容である。
肝心のギャグも粗野な物が多く、ディズニーの持つ田舎っぽさが悪い意味で目立ってしまった作品と言えるだろう。また背景とキャラクターの動きが反対になっているために、キャラが逆向きに歩いているように見えるシーンも存在する。(図1)
本作で特筆すべきなのは、本作が1934年頃にドナルドやグーフィーといった魅力的なキャラクターが登場するまでミッキーの名脇役として活躍したホーレス・ホースカラーのデビュー作だとされている点である。(文献やサイトによっては本作に登場する牝牛がクララベル・カウだとされている事もあるが、本作の牝牛はほとんど擬人化されていないため、ただの家畜だろうと筆者は考えている。)



収録DVD:ミッキーマウスDVDBOX vol.1

2018年12月16日日曜日

All's Fair at the Fair(博覧会へ行こう)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1938年8月26日
評価:★8


奇抜なアイデアと美しい背景美術が魅力的な傑作


『カラー・クラシック』第25作。
前作『スパンキー登場(Hunky and Spunky)』は「シリ―・シンフォニー」の二番煎じ的な作品だったが、本作はフライシャー特有の都会的なセンスが遺憾なく発揮されており、文句なしに楽しい傑作となった。チーフアニメーターはマイロン・ウォルドマンとグラハム・プレイス。同時期のカラー・クラシックやベティ・ブープといったシリーズの作品を数多く担当した常連アニメーターである。

ある田舎っぽいカップルが、馬に乗って万国博覧会に訪れる。そこではインスタント・ハウスやオレンジジュースの自動販売機といった珍発明の数々が展示されており、その面白さにカップルは大喜びする。次に2人は美容室へと赴くが、なんとメイクや調髪をしてくれるのは全てロボット。田舎っぽい風貌から一変し、見違えるほど都会的で綺麗になった2人はダンス会場へと向かう。
ダンスミュージックの演奏はもちろんロボット、ダンスパートナーもロボットである。ラテンとスウィングのリズムに合わせて楽しく踊った後の2人はいよいよ会場を後にする…のかと思いきや、なんと自動車の自動販売機があるではないか。男は組み立て式のロードスターを購入し、急いで組み立てる。組み立てが完了すると、2人は車に馬を乗せて物凄いスピードで会場を後にするのだった。

かつての『ベティの発明博覧会(Betty Boop's Crazy Inventions)』や『グランピー』シリーズで発揮された奇抜な珍発明のアイデアが再びたっぷりと楽しめるのが、本作の最大の魅力である。
フライシャーはこうしたSF調の作品をサイレント時代から得意としており、後の「スーパーマン」シリーズもこうした作品群の系譜の一つと言えるだろう。事実本作では、「スーパーマン」を彷彿とさせるモダンで魅力的な美術背景が全編に亘って用いられている。
ギャグやストーリー性こそ薄く単純な科学礼賛に徹した内容ではあるが、その魅力は現在観ても全く色褪せていない。むしろ、こうした科学技術に純粋な夢を抱けなくなった現代だからこそかえって魅力的に映る、再評価されるべき傑作なのかもしれない。
残念ながら、本作以降都会的なセンスが光るモダンな作品は「カラー・クラシック」から二度と産み出されなかった。フライシャー・スタジオは、こうした傑作を生みだしつつもシリーズの作風をよりディズニー調な物へと変化させていったのである。

 

※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland

2018年11月30日金曜日

When the Cat's Away(ネコの居ぬ間のタップダンス)

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監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1929年4月11日
評価:★4



ミッキーが本来のネズミの大きさで登場する異色作


「ミッキーマウス」第6作。
作画は主にアブ・アイワークスとベン・シャープスティーンの2人が担当したようだ。確かに本作辺りから、アブのタッチとは若干異なる作画が見受けられるようになる。ベン、そしてバート・ジレットはちょうどこの時期にディズニーのスタジオへ入社し、アブの影響が色濃かったスタジオの作風を徐々に変化させていく。

トム・キャット(ピートによく似ているが、別人らしい)が狩りに出かけると、ミッキーとミニーは彼らの友人であるネズミたちと一緒にトムの家へと忍び込む。ミッキーとミニーはピアノで「かわいいオーガスチン(Oh du lieber Augustin)」を弾き、他のネズミたちは家具や自分を楽器に見立てて楽しく演奏を始める。他にも「Listen to the Mocking Bird」や「埴生の宿(Home Sweet Home)」といった古くから伝わる歌をバックに様々なギャグが展開される。

前作『ミッキーのオペラ見学(The Opry House)』まではその快活さで作品に華を添えていたBGMが、本作では突如として貧弱になり音楽面での魅力が非常に薄くなってしまった。その割には音楽ありきのギャグやダンスシーンが内容の大部分を占めており、視覚的なギャグやストーリーラインは皆無に等しい。全体を通して、少し退屈な作品である。
1929年度の「ミッキーマウス」は本作のようにトーキーの物珍しさに甘んじたかのような作品が目立っており、こうした作品群に不満を持ったアブや音楽監督であるカール・ストーリングのフラストレーションが、「シリー・シンフォニー」という新しい実験的なシリーズを生み出すきっかけになったのではないだろうか。事実、「シリー・シンフォニー」の第一作『骸骨の踊り(The Skeleton Dance)』のアイデアをウォルトに最初に提案したのはストーリングだったのだ。
また、本作は「アリス・コメディー」時代の短編『アリスの家を守ろう(Alice Rattled by Rats)』(1925)のリメイク作であり、両作の間で類似したギャグが見受けられる。(3匹のネズミが自分たちを蓄音機に見立ててレコードを演奏するというギャグなど)
またリメイク元の設定をそのまま踏襲したためか、本作はミッキー達が実際のネズミと同じ大きさで登場するという非常に珍しい作品でもある。



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2018年11月24日土曜日

The Barn Dance(バーン・ダンス)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1929年3月14日
評価:★7


生意気なキャラクターがキュートな佳作


「ミッキーマウス」第4作。前作の『蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)』に引き続き当初よりトーキー作品として製作されたが、本作は音楽劇ではなくストーリーとギャグが主体である。そのため前シリーズの「オズワルド」を彷彿とさせる楽しい作品に仕上がっており、生意気で野暮ったいキャラクター達が巻き起こす騒動を存分に楽しむことができる。
作画は主にアブ・アイワークスとレス・クラークの2人が担当したようである。本作でもアブのスマートで軽快なアニメ―トが冴えている。

「おんまはみんな(The Old Gray Mare)」のメロディーに乗せて馬車を走らせるミッキー。彼はミニーをバーン・ダンスに誘おうとしたのだが、不運にも同じくミニーをダンスに誘おうとしたライバル、ピートが車でやってくる。ピートの車に惹かれたミニーはピートをダンスの相手に選ぶが、その直後に車が事故を起こしてしまう。そこでミニーはミッキーと共にダンス会場へと向かうのだったが…
なんとミッキーは踊りが大の苦手だったのだ。ミニーの足を何回も踏んづけてしまったので、カンカンになったミニーは踊りの上手なピートを次の相手に選んでしまう。嫉妬したミッキーは機転を利かせてズボンに風船を仕込み、今度こそミニーと上手に踊ろうと画策する。
ところが仕掛けに気付いたピートがパチンコで風船を割ってしまったために、この作戦も失敗。とうとうミニーが愛想を尽かしてしまったので、ミッキーは泣き出してしまうのだった。

悪役が主人公の恋敵として登場し、ヒロインを巡って争うという図式は「オズワルド」を始めとするサイレント時代のディズニー製カートゥーンではよく見られるスタイルであった。本作のプロットやギャグはサイレント時代からの大きな変化はないが、踊りを作品の中心に据えているのはトーキー作品らしい。
本作の見どころは、少し生意気だが生き生きとしたキャラクター達のキュートさに尽きる。現在でこそ「スター」「品行方正」といったイメージが定着してはいるが、1932年頃までのミッキーはいたずらっぽく快活で、少し生意気な少年だった。性格に深みはないが、とにかく元気で明るい典型的なカートゥーン界の住人だったのだ。
また、サウンドトラックも興味深い。本作で使用されている曲は「おんまはみんな」「いいやつみつけた(Pop Goes the Weasel)」「Reuben and Rachel」といった古いフォークソングが中心であり、ポピュラー音楽を所狭しと使いまくっていたフライシャー兄弟やハーマン=アイジングの作品とは対照的である。
そもそも「バーン・ダンス」自体がアイルランドの古い習慣だったらしく、アイルランド系の移民であるウォルトの嗜好が伺える。



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2018年11月17日土曜日

Steamboat Willie(蒸気船ウィリー)

監督:ウォルト・ディズニー
公開日:1928年11月18日
評価:★10


『ミッキーマウス』の伝説


オズワルドを失ったウォルトとアブが新しいキャラクター「ミッキーマウス」を用いて製作した『プレーン・クレイジー(Plane Crazy)』と『ギャロッピン・ガウチョ(The Gallopin' Gaucho)』は素晴らしい出来だったが、配給会社が見つかることはなかった。オズワルドを始めとするそれまでのディズニー製カートゥーンと、一線を画す物がなかったからだ。ウォルトは、さらなる新しい要素を作品に追加する必要があると悟った。
本作の公開前年には、サウンド付きの映画『ジャズ・シンガー』が大ヒットを記録していた。時代はサイレントからトーキーへと移り変わろうとしていた。成功のチャンスとなる新しい要素は、紛れもなくサウンドだったのである。
こうして「ミッキーマウス」第三作の『蒸気船ウィリー』は、ディズニーとしては初めてのサウンド付きカートゥーンとして製作が開始された。
そして、愉快なネズミが主人公の、およそ7分半のこの短編は、伝説となった。

口笛を吹きながら、蒸気船を操縦するミッキー。ところが勝手に操縦していたため船長のピートに叱られてしまう。
蒸気船が港に到着すると、ミッキーが家畜を蒸気船に積み上げる。ミッキーが家畜を運び終わると再び蒸気船が出港するが、ミニーが蒸気船に乗り遅れてしまったのでミッキーは彼女をクレーンで蒸気船へと運ぶ。ところがその拍子に彼女が持っていた楽譜とギターがヤギに全て食べられてしまったのだ。そこでミッキーとミニーはヤギをオルガンに見立てて、ヤギを使って演奏を始める。
ヤギの口から『わらの中の七面鳥』のメロディーが流れ出すと、ミッキーは音楽に合わせて食器や洗濯板、挙句の果てには動物までもを楽器代わりにして大騒ぎする。
ところがこの乱痴気騒ぎをピートに見られたのだから、一巻の終わりである。またしてもピートに叱られたミッキーは、罰としてジャガイモの皮むきをさせられるのだった。

前二作に引き続いて大部分の作画をアブ・アイワークスが担当したと思われるが、ウィルフレッド・ジャクソンやレス・クラークといった若手アニメーターも製作に関わっている。特にウィルフレッドに関しては音楽の知識があったため、本作のサウンドトラックまで担当したという活躍ぶりである。
さて、本作の最大の特徴は、紛れもなく「音楽とアニメーションとの完璧なシンクロ」にある。

本作は決して「世界初のトーキーアニメーション」ではない。実際に1926年にはインクウェル・スタジオ(フライシャー・スタジオの前身)が既にサウンド付きの小唄漫画『My Old Kentucky Home』を製作しているし、本作公開の2ヶ月前にもポール・テリーがサウンド付きのカートゥーン『Dinner Time』を製作している。しかしこれらの作品は、『蒸気船ウィリー』のように音とアニメーションが完璧にシンクロしているわけではなかった。
本作は蒸気船の汽笛とミッキーの口笛から始まるが、どちらもアニメーションと音楽が完全にシンクロしている。ヤギをオルガンに見立てて演奏するギャグは既に『ライバル・ロメオズ(Rival Romeos)』で使用されたものだが、本作ではさらに有意義なギャグとして効果的に用いられている。バケツを叩くミッキーとドラムの音は完璧に調和しているし、スクリーンの観客に向かって鳴き喚くアヒルの臨場感は格別である。
この完璧なシンクロが実現したのは、「バー・シート」や「バウジング・ボール」を作画や録音に用いた事が大きく関係していたという。ウォルトやアブを始めとするスタッフたちの野心と情熱が、カートゥーンに革新をもたらしたのである。

ところが、本作にも欠点がないわけではない。『ギャロッピン・ガウチョ』やそれ以前のオズワルド作品にあったストーリーラインが皆無なのである。
確かに本作はあくまでもミュージカルであり、物語の筋書きは必要ない。つまり「トーキーでないと成立しない作品」なのだが、本作のヒットを機にディズニーではこの後しばらくこういった音楽主体の作品が量産される事になる。ストーリーや視覚的なギャグは二の次になり、音楽に絡めたギャグやダンスが作品の主体になってしまうため、これはどうしても退屈なものになってしまうリスクがあった。
しかし本作には、原始的だが愉快な、音に合わせて絵が動く楽しさに溢れている。家畜を楽器同然のように扱うミッキーも、乱暴だがこの上なく愉快だ。

Down South(1930)
本作は、アメリカのカートゥーン業界に大打撃を与えた。
ディズニーは一躍業界のトップに躍り出ることになり、1930年代前半までに「ミッキーマウス」はアメリカン・カートゥーンのシンボル的存在になった。
そして、幾多ものスタジオがディズニーの作風(そしてアブの作画スタイル)に影響を受けながら、独自のスタイルを築いていった。「アメリカン・アニメーションの黄金時代」の幕開けである。
本作の影響の強さは、チャールズ・ミンツのスタジオにてディック・ヒューマーらが製作した『Down South』という作品からもよくわかる。ヴァン・ビューレンやハーマン=アイジングの作品も、1930年頃はミッキー調の快活なキャラクターで溢れかえっていた。
一方サイレント時代におけるカートゥーンの王者だった「フィリックス」とパット・サリヴァンはカートゥーン業界の玉座から転がり落ちてしまい、その栄華を取り戻すことはなかった。同じく業界トップから転落したフライシャー兄弟は…業界トップに返り咲く事は決してなかったが、1930年代を通じてディズニーの強力なライバルとして君臨し続けたのである。

本作は、様々な意味でアメリカン・アニメーション史の転換点となった作品である。そして公開から90年を経た現在も決して色褪せる事のない輝きを放ち続ける、まさに「伝説の作品」なのだ。


(上記の公式動画では、ミッキーが豚のお母さんを楽器に見立てるシーンがカットされている)

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2018年11月16日金曜日

An Elephant Never Forgets

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1935年1月2日
評価:★5

ゾウは決して忘れない…?


『カラー・クラシック』第3作。
作画チーフはシーモア・ネイテルとローランド・クランドルで、どちらもフライシャー作品ではお馴染みのベテランアニメーターであり、『ベティ』『ポパイ』など数多くの作品に携わっている。

舞台はジャングルにある動物学校。楽しそうに登校する動物たちの中でもひと際目立つのが、低い声で歌いながらスキップするゾウと泥まみれになって歩くブタ、そしてカタツムリよりもゆっくり歩くカバの三匹である。ゾウが学校に着くと、さっそく彼はゴリラにいじめられてしまう。怒ったゾウは「ゾウは絶対に忘れないぞ」と呟くのだった。そんな騒動をよそに、ダチョウの先生が授業を始める。ここからこの作品のテーマ曲が始まり、歌に合わせて先生が問題を出すのだが、誰も質問に答える事ができない。
そんな生徒たちを見てゾウは「僕は絶対に忘れない」と自慢するのだが、いざ自分が当てられると何も答えることができない。みんなはゾウを指さし大笑い。
こうして授業がひと段落すると、次の時間はテストである。先生に代わってカメがテストの指示をするのだが、カンニングが行われたり教科書の投げ合いが始まったりともう教室はめちゃくちゃ。ところが先生が戻ってくると教室はすぐ静かになった。騒動に気付かない先生が帰宅の指示を出すと、動物たちは一斉に下校する。校舎の前でずっと眠っていたカバが、下校時間になったとわかるやいなや猛スピードで下校を始めるというギャグが面白い。
ゴリラとゾウもスキップしながら下校するのだが…。ゴリラがゾウの腰を蹴ると、なぜかゴリラは猛烈に痛がる。なんとゾウの腰には洗濯板が入っていたのだ。ゾウは学校でいじめられた事を決して忘れておらず、見事に復讐したというカタルシスを感じるオチで物語は終わる。

本作は2色式テクニカラーで製作されており、しかも現存するプリントの状態も決して良くないため、色彩は正直言って微妙である。それよりも、冒頭で使用されるステレオプティカル・プロセスが独自の輝きを放っている。「カラー・クラシック」の最大の魅力は、こうしたセットバック撮影をふんだんに用いていることだろう。また、サミー・ティンバーグによる快活な音楽も魅力的である。
本作はフライシャー・スタジオとしては1935年に公開された初めての作品であり、この年辺りからスタジオの作風はディズニーの影響を受けたより穏当なものに変化していく。
そうした流れは本作の欠点からも読み取れる。キャラクターデザインは従来の『フライシャー・スタイル』とでも言うべき奇妙なデザインを踏襲しているが、物語やギャグから独特のアクや毒っ気が消え、完全に子供向けな作品になってしまっているのだ。
楽しめない事はないが、少し消化不足の感がある惜しい作品である。



※収録DVD:Max Fleischer's Color Classics: Somewhere in Dreamland
(上記のDVDだが、残念ながら本作にて音ズレが発生している。音質もあまり良くないため、その辺りを気にされる方は注意した方が良いかもしれない)

2018年11月8日木曜日

The Gallopin' Gaucho(ギャロッピン・ガウチョ)

監督:ウォルト・ディズニー
試写日:1928年8月2日
公開日:1928年12月30日
評価:★8

『ミッキーマウス』の変化


前作「プレーン・クレイジー(Plane Crazy)」の試写から約3か月後、ディズニーは再びネズミを主人公にした短編を製作する。この作品が試写された8月にディズニー製作分のオズワルドは終了したため、恐らくこの作品はミンツとの契約終了後に製作されたと思われる。オズワルドと並行して製作された「プレーン・クレイジー」とは異なり、こちらは本当に0からのスタートだったのだ。
作画も前作に引き続きアブ・アイワークスがほぼ単独で手がけたと思われる。ただこの頃ウィルフレッド・ジャクソンがスタジオに入社しており、ウィルフレッドとレス・クラークがヘルプで作画したシーンも幾つかあるかもしれない。(ウィルフレッドは次作「蒸気船ウィリー」でなんと音楽を担当したのだ)

お尋ね者のガウチョ、ミッキーはダチョウに乗って酒場へと向かう。酒場でミッキーはダンサーのミニーと共にダンスを踊っていると、そこに現れたのが荒くれ者のピート。ピートはミニーを連れ去ってしまうが、ミッキーも酔っ払ってしまったダチョウに乗ってピートを追いかける。ピートのアジトに辿り着いたミッキーはついにピートと決戦。機転を利かせた戦法で見事勝利したミッキーは、前作では叶わなかったミニーとの熱いキスを交わすのだった。

この愉快な短編は、2作目にしてミッキーマウスというキャラクターが2つの面で変化した作品といえる。
まず、デザインが変化した。前作ではフィリックスのような大きな白目が特徴だったが、本作の後半部分からは現在でもお馴染みの黒目がちなデザインになっている。また、ブーツも今作からの着用である。
そして、性格も変化した。前作ではいたずらっぽい好色な面が目立っていたが、本作では一転、勇敢な正義の味方『ガウチョ』を演じている。後のミッキー短編でも本作のようなメロドラマ的な物語は何度となく用いられたが、本作はミッキーが「ヒーロー」としてフィーチャーされた最初の作品といえる。(とはいえ、高笑いしながら煙草を吸い酒を飲み干す荒っぽい所作は、現在のパブリックイメージとは似ても似つかないが…)
また、トーキー版の音楽を担当したカール・ストーリングにとっても重要な作品である。彼は元々映画館で無声映画のための伴奏音楽の演奏や楽団の指揮などを行っていたのだが、恐らく本作と「プレーン・クレイジー」が彼が初めて音楽を担当したアニメ―ションだったと思われる。1930年代後半以降ワーナーにて伝説的な功績を残す事になるストーリングだが、本作は彼の原点なのだ。

本作はストーリーが主体であり、ギャグ中心だった「プレーン・クレイジー」に比べると視覚面での楽しさは薄れている。だが、「ミッキーマウス」というキャラクターの変遷を考える上では重要な作品といえるだろう。そして本作はその完成度の高さにも関わらず、またも配給会社を獲得する事ができなかった。
だが、ディズニーに訪れる大きな好機は、もうすぐそこまで来ていた。



収録DVD:ミッキーマウスDVDBOX vol.1

2018年11月5日月曜日

Plane Crazy(プレーン・クレイジー)

監督:ウォルト・ディズニー
試写日:1928年5月15日
公開日:1929年3月17日
評価:★10


『ミッキーマウス』の誕生


1928年の春にニューヨークへと旅行したウォルト・ディズニーは、そこでオズワルドの権利が配給元のユニバーサルとチャールズ・ミンツにある事を知り、更にはヒュー・ハーマンやルドルフ・アイジング、そしてフリッツ・フレレングといった有能なアニメーターまで失う事となる。
アニメーターとオズワルドを失ったウォルトの下に残ったのは、スタジオ設立以前からの盟友であったアブ・アイワークスと、当時まだ新人だったレス・クラークを始めとする数人のアニメーターだった。アブは、「ミッキーマウス」という新しいキャラクターが登場するカートゥーンの原画をほぼ1人で、しかも2週間で描きあげた。そして何より驚くべきなのは、この突貫工事で作り上げたカートゥーンが今までのディズニー作品の中で最も楽しい代物だった、という事である。そうして生まれたのが「プレーン・クレイジー」、ミッキーマウスが初めてフィルム上で動いた記念すべき作品である。

リンドバーグに憧れるミッキーは動物たちと飛行機を作るが、失敗する。それでもめげないミッキーは自動車とクジャクの羽を使って再度飛行機を作り上げ、ガールフレンドのミニーを空の旅へと誘う。飛行機は幾多のトラブルを経てやっと離陸するが、ミッキーにキスを強要されたミニーは怒って飛行機から降りてしまう。ミッキーがミニーに気を取られて操縦を忘れたがために飛行機は真っ逆さまに墜落、恋も飛行の夢も悲惨な終わりを迎えてしまうのだった。

この作品は元々はサイレント映画として制作され、カール・ストーリングによるサウンドトラックは1929年の劇場公開時に改めて追加された物である。そのため、音と映像の同期という点では少し原始的な作りになっており、当初よりトーキー映画として制作された『蒸気船ウィリー』以降の作品と比べると見劣りがする。
ただ、映像面では『蒸気船ウィリー』を超える楽しさに満ちているといえるだろう。この6分の短編映画にはパースの変化を存分に楽しめる背景動画や激しいアクション、そしてキャラクターのパントマイムを中心とした愉快なギャグがこれでもかと詰め込まれており、アニメーションが本来持つ原始的な楽しさを堪能できる。
アブの作画はしっかりした遠近感と流れるようなアニメーションが特徴だが、この作品ではそんなアブの長所が最大限に活かされたといっても過言ではないだろう。
特に目を見張るのは、ミッキーが操縦する飛行機が自動車や柱に衝突するシーンだ。この背景動画の素晴らしさは言葉にできない。まるでこちらまで飛行機に乗っているかのような、素晴らしい酩酊感と臨場感を味わう事ができる。

本作品を含め、初期のミッキーは現在のような紳士的な性格ではなく、いたずらで好色な面が目立つ。オズワルド、そして「フィリックス」や「マットとジェフ」「道化師ココ」といった同時代のカートゥーンキャラクターの基本的な性格を踏襲した結果だろう。(アブのアニメーション自体はポール・テリーの「イソップ物語」から多分な影響を受けていると思われる)
デザインや作風も(同一スタッフなので当然だが)オズワルドとよく似ており、サイレント作品として制作された本作は配給会社が見つからず、お蔵入りになってしまったという。ディズニーとアブが再び栄光を勝ち取るには、本作の試写日から約半年後の11月18日、ディズニー初のトーキー作品「蒸気船ウィリー」の公開日までその好機を待たねばならなかった。



収録DVD:ミッキーマウスDVDBOX vol.1
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2018年10月31日水曜日

Minnie the Moocher(ベティの家出)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1932年3月11日
評価:★10


フライシャーの怪奇趣味がキャブのブルースと見事に融合した傑作


『トーカートゥーン』第34作。1932年から1933年にかけてフライシャー・スタジオでは名ジャズシンガーのキャブ・キャロウェイをフィーチャーした短編を3つ製作しており、この作品はその1作目である。原題のとおり、この作品ではキャブが1931年に録音し大ヒットとなったブルース『ミニー・ザ・ムーチャー』をバックに数々の怪奇的なギャグが展開される。
作画者としてクレジットされているのはウィラード・ボウスキーとラルフ・サマーヴィルだが、名シーンとして名高いセイウチが踊る場面はバーナード・ウルフが作画を担当したらしい。

まず、冒頭でキャブ・キャロウェイと彼の楽団、そしてクレジットが実写で映し出される。この実写映像がまた格別で、キャブがあのくねくね踊りを披露するのだ。
夕食を食べないので両親から叱られるベティ。ベティを叱る父親の顔がシリンダー式蓄音機に変化するというギャグ(時代遅れの暗喩?)が挟まれ、両親の冷たさに嫌気が差したベティは家出をすることに決める。ビン坊と共に家を出るベティだったが、町を歩いていると次第に辺りは陰気臭くなり、恐怖に怯える二人は急いで洞窟へと逃げ込む。
すると現れたのは巨大なセイウチの幽霊!セイウチは「ミニー・ザ・ムーチャー」を歌いながら不気味な踊りを披露する。この踊りはキャブの動きをロトスコープを用いてトレースしており、キャブの魅惑的で怪しげな雰囲気を見事に再現している。セイウチ(キャブ)の「ハイディホー」に合いの手を入れるのは、骸骨、猫や囚人の幽霊など恐ろしい魑魅魍魎たち。この奇妙な連中が繰り広げる怪奇ギャグが実に不気味で、面白いのだ。
「ミニー・ザ・ムーチャー」が終わるとBGMは陽気な「タイガー・ラグ」へと変化し、洞窟から逃げ出したビン坊とベティを幽霊たちが執拗に追いかける。最後にはベティ、ビン坊共々家に逃げ帰ってしまい(ビン坊が犬小屋に入るのが可笑しい)、ベティがベッドに潜るとベッドの上に置いてあった書き置きが破れ「Home Sweet Home」になるという素敵なオチで物語は締めくくられる。

「キネマ旬報」昭和7年6月21日号より
ストーリー性は薄く、内容も「ミニー・ザ・ムーチャー」に乗せて怪奇趣味の数々を繰り広げる事に終始している。スウィング感も「お化オン・パレード(Swing You Sinners!)」や後の「ベティの山男退治(The Old Man of the Mountain)」に比べると少し物足りなく、「魔法の鏡(Snow-White)」ほど突き抜けたシュールさはない。
当時のキネマ旬報でも、本作品はなぜか『小唄漫画』(Screen Songs)の一作品として紹介されてしまっている。当時のこの作品が一種のミュージック・ビデオとして認識されていた証拠であろう。

しかし、ロトスコープを用いて作画されたセイウチの踊りや幽霊が繰り広げる不気味なギャグの悪趣味さとグルーヴ感は何物にも代えがたく、この作品を傑作たる所以にしている。ロトスコープを用いることでキャブの踊りを忠実に、そして滑らかに再現する事に成功しているが、その滑らかさには一種の不気味さや生気の無さがある。この作品ではそんな不気味さが作品の魅力そのものに昇華しているのだ。これはロトスコープが作品の魅力の減退に繋がってしまった「ガリバー旅行記(Gulliver's Travels)」(1939)とは対照的である。
キャブの毒を交えたブルースとフライシャーのオフビートな作風の相性が極めて良かったからこそ誕生した、奇跡の傑作と言えるだろう。
ちなみにこの作品が公開される僅か6日前には、同じくキャブの持ち歌であり「ミニー・ザ・ムーチャー」のアンサーソングでもある「Kickin' The Gong Around」をフィーチャーした短編『Fly Frolic』がヴァン・ビューレン・スタジオにより公開されている。両作品を見比べてみるのも一興ではないだろうか。




(言わずと知れた名ブルース「Minnie the Moocher」のオリジナル録音)

※収録DVD:Betty Boop: The Essential Collection Vol.3

2018年10月29日月曜日

Felix the Ghost Breaker(フィリックスのオバケ騒動)

監督:オットー・メスマー
公開日:1923年1月1日
評価:★8

「幽霊は君を求めている」


シリーズがいよいよ大衆からの支持を獲得し、作品の質も向上し始める1923年に製作された作品。

フィリックスが墓場で寝ていると、うなり声と共に突然幽霊が現れる。幽霊にいたずらされて怒ったフィリックスは、幽霊の行く先を追う。すると幽霊はある農夫の家へと忍び込み、彼や彼の家畜を散々に苦しめているのだからさあ大変。農夫は警察に助けを求めるが、さすがの警察も幽霊には歯が立たない。
そこで今度はフィリックスが幽霊退治を試みる。散々に痛めつけられてしまうフィリックスだったが、機転を利かせて幽霊を追い詰めてみるとその正体はなんと不動産屋。恐怖につけこんで農夫に家を売らせようとしていたのだ。農夫が飼っているロバが彼を遠くへ突き飛ばし、物語は終わりを迎える。

フィリックスのデザインは依然としてリアルな黒猫に近く、彼らしいパーソナリティーを得るまでには至っていない。キャラクターのパントマイムを中心とした作画もまだこなれておらず、堅い印象を受ける。作画やデザインの面でフィリックスに変化が見られるようになるのは、メスマーのアシスタントだったビル・ノーランが『ラバーホース・スタイル』と呼ばれる独特の作画スタイルを確立する1924年頃からである。
しかし、どこか毒のあるユーモアや前衛的な怪奇描写など、後の作品に繋がる要素がこの作品からは多々見受けられる。特に、フィリックスが幽霊に襲われるシーンの魅力は現在でも全く色褪せていない。
メスマーはハイコントラストな画面作りの名手であり、フィリックス終了後(1937年以降)も30年以上に亘りネオンサイン用の影絵調アニメーションを多数制作していたという。[参考] 本作でもその手腕が存分に発揮されたといえるだろう。
例によって背景や人物は全て単色で描かれているが、この作品ではそれが一種の様式美を生み出しており、作品全体に漂う恐ろしい雰囲気を演出する事に成功している。
独特の怪奇描写が素晴らしい、メスマー版フィリックス中期の傑作である。



収録DVD:フィリックス Felix the Cat DVD BOX (DVD2枚組)

2018年10月25日木曜日

The Headless Horseman

監督:アブ・アイワークス
公開日:1934年10月1日
評価点:★6

アブ・アイワークス版『スリーピー・ホロウの伝説』


MGMとの配給契約が切れ、スタジオの親会社であるセレブリティ・プロダクション自身によって配給されたアイワークス・スタジオの「コミカラー」シリーズ。本作は1933年から1936年にかけて全25本が製作されたうちの第7作目である。
原作は、アメリカではハロウィンの時期になるとよく語られるという「スリーピー・ホロウの伝説」。ディズニーも1949年にオムニバス形式の長編アニメ「イカボードとトード氏」の1パートとしてこの物語をアニメ化しているが、本作の公開年は1934年。ディズニーに先駆けること約15年である。

のどかな村スリーピー・ホロウに住む美しい女性カトリーナ・ヴァン・タスル。大柄な若者ブロム・ボーンズと気の優しい教師イカボード・クレインの2人は彼女に恋心を寄せていた。
ある日の学校では、イカボードが「首なし騎士の伝説」という恐ろしい本を読んでいた。そんな時、彼はカトリーナからパーティーに誘われる。おめかしをしてカトリーナの家へと赴くが、そこには忌々しきライバル・ブロムの姿が。パーティーが始まると、2人はなんとかしてカトリーナの気を引かせようと様々な手をつかって彼女にアプローチするのだが、なかなか決着がつかない。そこでブロムは帰路でイカボードが怖がっていた「首なし騎士」に仮装し、彼を脅かす事にする。ブロムの企みは成功し、イカボードは一目散にどこか遠くへと逃げていった。
そうしてブロムとカトリーナの結婚式が行われたのだが…そこに現れたのは首なし騎士。ブロムもカトリーナも式場から逃げ出してしまうが、首なし騎士の正体はなんとイカボードだったのだ。

本作の最大の見どころは、アブ自身が自動車の部品で作り上げたという独自のマルチプレーン・カメラを撮影に導入している点が挙げられる。特にタイトルカードを始めとする幾つかのカットで登場する、首なし騎士が馬に乗って駆けていく動画の迫力は目を見張るものがある。イカボードの机を回り込むカットなど、他にもマルチプレーン・カメラが使用されているシーンが幾つかあり、そのどれもが抜群な効果を上げているのが素晴らしい。
ただキャラクターデザインに関しては若干粗雑な部分が目立ち、カトリーナは美女というよりもぽっちゃりとしたベティ・ブープである。イカボードは初期のフライシャー作品に登場する爺さんを彷彿とさせるデザインだ。(当時のスタジオには元々フライシャーに在籍していた作画スタッフが多数在籍していたので、仕方ない事ではあるのだが…)
アイワークス作品のご多分に漏れず、ストーリーやギャグの面でもイマイチ感は否めない。特に中盤はありきたりな演出尽くしで中だるみしてしまっているのが残念。
とはいえ個々のカットの完成度やアニメーションの出来自体は素晴らしく、玉石混合の「コミカラー」の中ではなかなか出来の良い部類に入る佳作といえるだろう。

2018年10月22日月曜日

Betty Boop's Hallowe'en Party(ベティのキングコング退治)

監督:デイヴ・フライシャー
公開日:1933年11月3日
評価:★5

ハロウィンパーティーでゴリラが大騒ぎ


『ベティ・ブープ』第22作。タイトルの通り、ハロウィンパーティーを舞台にしたお話である。公開日も11月3日、まさに季節ネタの作品だ。
この年の3月にかの名作映画『キングコング』が公開、大ヒットしているため、この作品もそうしたキング・コング・ブームにあやかった作品だろうと筒井康隆氏は『ベティ・ブープ伝』で推測しているのだが、それにしてはコング役に相当するゴリラが小さすぎるような気がしないでもない。邦題は言うまでもなく露骨にキングコングにあやかったタイトルなのだが…。

ある寒い夜、ベティからハロウィン・パーティーの招待状を受け取ったかかしがベティの家を訪れる。かかしとベティはパーティーの準備で大忙し。準備が終わり戸を開けると、動物たちが窓から入ってくる。ベティが「Let's All Sing Like the Birdies Sing」という童謡(?)を歌い終わると、楽しいハロウィン・パーティーの幕開けである。
動物たちがパーティーを楽しんでいるその時、キングコングを彷彿とさせる悪漢ゴリラがパーティーに乱入してくる。ゴリラはベティを捕まえようとするが、ベティが電気を消すと途端にオバケや壁に描かれた魔女がゴリラを襲い始める。
ゴリラはあまりの恐ろしさにベティの家から逃げ出し、ベティはオバケと一緒に「ププッピドゥ」を唱えるのだった。

パーティーが始まるまでの前半部分はなかなかナンセンスで面白いのだが、パーティーが始まってからの後半部分はやけに幼稚なギャグが目立ち失速してしまうのが惜しい。作画もあまり良いとはいえない。
せっかくハロウィンが作品の主題なので、ホラー演出やオバケネタと相性がいい「ベティ・ブープ」なら工夫次第ではもっと良い作品になれたのではないだろうか。作画チーフの一人であるウィラード・ボウスキーはあの怪奇カートゥーンの傑作『お化オン・パレード(Swing You Sinners)』 や『ベティの家出(Minnie the Moocher)』の作画を担当した人物でもあるので、尚更そう思うのである。
物語前半で頻発するナンセンスなギャグや快調なBGMなど楽しめない事はないのだが、色々と消化不良に終わってしまった惜しい作品といえる。



※収録DVD:Betty Boop: The Essential Collection, Vol.1

2018年10月18日木曜日

The Cookie Carnival(クッキーのカーニバル)

監督:ベン・シャープスティーン
公開日:1935年6月29日
評価点:★8

まさに「お菓子」のような甘い魅力を持つ傑作


シリー・シンフォニー第53作。公開年は1935年、この年には他に『うさぎとかめ(The Tortoise and the Hare)』『音楽の国(Music Land)』『誰がコック・ロビンを殺したの?(Who Killed Cock Robin?)』といった傑作群が立て続けに発表された。1930年代のカートゥーンを代表するこのシリーズも、30年代中期に差し掛かりまさに円熟の域に入っていたと言える。
さて、この作品はタイトル通り「お菓子の国」を舞台にした作品で、登場人物たちも皆クッキーなどのお菓子を擬人化したキャラクターとなっている。背景美術もお菓子がモチーフとなっており、同時期のシリー・シンフォニー作品の中でも異彩を放っているといえるだろう。

お菓子の国では、今日は楽しいカーニバルの日。カーニバルでは、一番美しい女を女王にするためのコンテストが開かれていた。そんな賑やかなカーニバルをよそに、綺麗な服を持っていないためにコンテストに出られないと嘆くクッキーの女の子。たまたま女の子の近くを通りかかった浮浪者のクッキーは、お菓子を使って女の子を美しい女性に仕立て上げてやるのだった。
さて、めでたく彼女はコンテストに出場。圧倒的な美貌により見事優勝し、女王に選ばれる。女王が決まったのなら王様も決めねば、という事で今度は王様のコンテストが開かれる。天使のケーキや悪魔のケーキなどたくさんの候補者が集まるが、女王はどれもお気に召さない様子。(この時の女王の表情が実にカワイイのだ)
それならと審査員自らが王様に立候補するが、そこへ現れたのが浮浪者のクッキー!女王は「王様に何をするの」と叫び(浮浪者クッキーの帽子は、守衛に殴られた時王冠のように割れていたのだ)、浮浪者のクッキーは王様に選ばれる。

王様が選ばれたことでパレードの盛り上がりは最高潮に達し、二人は熱いキスを交わすのだった。

さて、この作品ではアイワークス・スタジオから移籍してきたばかりのグリム・ナトウィック、テリー・トゥーンから移籍してきたばかりのビル・タイトラという二人の敏腕アニメーターが作画に大きく携わっているという点でも興味深い。
ナトウィックは浮浪者クッキーが女の子を美しい女王に仕立て上げるシーン、タイトラは天使のケーキと悪魔のケーキがダンスをするシーンをそれぞれ担当しているが、いずれのシーンもこの作品の中で特に印象深い場面である。
特にナトウィックが担当したドレスアップのシーンは、アニメ史に残る名場面といえるのではないだろうか。ベティ・ブープの生みの親であり後に白雪姫の作画にも携わる彼がアニメ―トした女の子の美しさ、可愛さ、色気は全く並大抵ではない。
フライシャー時代の荒っぽさがまだまだ残っており洗練されたアニメーションとは言い難いが、独特の野暮ったい作画の癖にまで一種の愛らしさを覚えるのである。
往年のチャップリンを彷彿とさせる浮浪者クッキーも、なかなか味わい深いキャラクターで好印象だ。(声はディズニー御用達であるピント・コルヴィッグが好演している)
まさにお菓子のような甘い魅力を持つ、素敵な作品である。



※収録DVD:シリー・シンフォニー 限定保存版 (初回限定) [DVD]